外来種インドクジャクについて
インドクジャクの生態
羽を広げたインドクジャク。当研究所の飼育個体 本来は日本に生息していません。いわゆる外来種(移入種)で、原産地はインド亜大陸・スリランカです。インドクジャクはキジの仲間です。キジの仲間は他にヤマドリやお馴染みのニワトリなどがあります。これらの鳥は長距離を飛ぶことが少なく、主に歩いて活動します。定着性が強く、渡りをしません。インドクジャクは尾のような長い羽が特徴です。しかしあの長い羽は人でいえば腰のあたりで、上尾筒(じょうびとう)と呼ばれます。尾の羽はその下に隠れています。この長い上尾筒は繁殖期の成熟したオスだけが持ちます。つまりメスや幼鳥、繁殖期以外のオスにはありません。雑食性で昆虫、トカゲ類、木の実、種子、葉など幅広い食性を持ちます。
夜間、木の上にいるインドクジャク朝と夕方は見晴らしの良いところで見られます。昼間は木陰に多く、夜は木の上で寝ます。
繁殖期の成熟したオスは羽を広げ、メスに求愛します。しかし羽を広げるのは、求愛のときだけではありません。オス同士もメスも羽を広げます。他の鳥に対しても広げることがあります。つまり自分の存在をアピールするための誇示行動です。雄はハーレム(一夫多妻制)をもつと勘違いされています。実際はオスはなわばりを持って移動せず,そこを複数のメスがまわっています.メスは数個の卵を産みます.巣は地上で、隠れたところにあります。卵は4週間ほどで孵化します。ヒナはメスのうしろに並んで移動し、2-3年で成鳥になります。寿命は20年以上と言われています。
黒島では2-7月に上尾筒の長いオスが見られます。オスが羽を広げて求愛する姿は3-6月に多く見られます。卵は5-8月に、メスがヒナを連れて歩く様子は6-10月に多く確認されます。
侵入の経緯
黒島では日常的にクジャクが見れる
その美しい色彩から日本各地に観賞用として持ち込まれ、動物園ではお馴染みの鳥です。八重山では最初に新城島に導入されました。そして1979年に小浜島のリゾートに持ち込まれ、観賞用として各地に寄贈されました。しかし管理の不備により各地で脱走し、野生化しました。現在では宮古島、伊良部島、石垣島、小浜島、新城島、与那国島そしてこの黒島で定着しています.さらに西表島でも確認されていますが、定着していないようです。インドクジャクはかなりの距離を飛べますが、各島を移動していないようです。定着した要因としては、八重山諸島の気候が原産地と同じく温暖である、天敵がいない、雑食性で多様な物を餌とすることがあげられます。黒島では、1980年代に観賞用として持ち込まれました。そして台風により飼育小屋が壊れ数羽が脱走しました。その後2000年頃から多く見られるようになっています。2005年の調査では、黒島の推定生息数は200-500羽です。島の全域におり一度に40羽以上を見ることもあります。朝と夕方は至る所で「ニャオー、パオーン、ケッ」などの鳴き声が聞こえます。なお島の北部に比較的多く、南部は少ないです。これは島の南側に寝床・休み場所である森が少ないためと考えられます。
被害の現状
クジャク対策で設置されたカカシサキシマカナヘビは黒島で激減している。写真は西表島の個体
人への被害としては、家庭菜園および牧場の牛の餌の食害があります。高齢者が多い離島では、多くの家庭が自家菜園をしており、大切は食料になります。しかし防鳥ネットなどを使わなければ、ほとんどが食害されます。そのため本来は黒島に無い文化であるカカシを作った家庭もありますが、効果は数日のようです。黒島の島民のほとんどは牛の畜産で、生計を立てています。この牛の飼料がクジャクにより食べられ、栄養バランスが崩れる、牛が食べなくなるという被害があります。生態系への被害もあります。黒島ではトカゲ類が激減しています。主たる原因は牛の放牧地や採草地を広げるための、森の伐採です。このためトカゲ類はわずかな森に生き延びていました。しかし森はクジャクの住みかでもあり、その捕食によりトカゲ類が減ったと考えられます。例えばごく普通に見られたサキシマカナヘビは、ここ数年の確かな記録は1例のみです。
駆除対策と問題点
小浜島で設置されている箱ワナ。クジャクが中に入ると戸が閉まる。
駆除は銃が最適です。クジャクは大型で、朝と夕方は見通しの良いところに現れるからです。しかし八重山諸島の多くの島は、観光業で成り立っています。島の至る所に観光を楽しむ人がいます。その横で銃による駆除ができるでしょうか?環境省は新城島で銃による駆除をおこない成果をあげています。しかし新城島は定期船がなく、人口数名だから可能でした。また黒島のように畜産が盛んな地域では、牛への流れ弾や銃声により繁殖に影響がでる可能性があります。このように多くの島で、銃による駆除ができない状況にあります。小浜島では、野生化の原因となった施設が精力的な駆除活動をしています。これは箱わなという手法で効果的です。しかし設置と維持にたいへんな費用がかかります。どのような駆除方法にしても、クジャクの数が減るほど採り難くなります。このため徐々に捕獲に力をいれなければいけません。もし数羽を残してしまえば再び増加します。しかし本来はクジャクに罪はありません。人が管理を怠ったために、罪をきせられ駆除されています。
国内のインドクジャクに関する主な文献・報道
文献
田中聡・嵩原健二.2003.先島諸島における野生化したインドクジャクの分布と現状について.沖縄県立博物館紀要,29:19-24.
田中聡.2004.小浜島における両生爬虫類の現状について.小浜島総合報告書,pp.21-33,沖縄県立博物館.
田中聡.2004.小浜島におけるインドクジャクの現状について.小浜島総合調査報告書,pp.65-74.沖縄県立博物館.
中村和雄.2005.八重山諸島黒島における野生インドクジャクの分布と日周活動性.ワイルドライフ・フォーラム10(1):1-7.
亀田和成.2006.特集・インドクジャク.月間研究所だより うみがめーる,24:7-8.
自然環境研究センター/多紀保彦監修.2008.インドクジャク.pp.64-65.日本の外来生物.平凡社.
報道・新聞
2006/5/17 八重山毎日新聞 「インドクジャク 郡内各地で繁殖」
2007/2/26 朝日新聞 「あぁクジャク天国」
2009/4/14 沖縄タイムス 「インドクジャク 環境省希少生物減少で駆除」
報道・番組
2006 テレビ朝日 「スーパーモーニング. 動物暴走列島6弾 -八重山諸島をジャック、インドクジャクの実態に迫る-」
2006 テレビ朝日 「スーパーJチャンネル. 新怒りの導火線 クジャク大繁殖に住民大迷惑」
2007 TBS 「イブニングニュース 繁殖クジャクに大迷惑。環境省が捕獲作戦」
2008 テレビ朝日「密着48時間.沖縄のリゾート占拠!?悪魔のクジャクとは・・」
2009 NHK沖縄 「ちゅら島 エコ島シリーズ インドクジャク」
2009 NHK 「おはよう日本」
2009 テレビ朝日「スーパーモーニング.クジャク増殖大騒動」
そのほか数点
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